脊椎・脊髄疾患

肩がこる、腰が痛い、手足が痛い・痺れる・力が入らない、長く歩けないなどの症状がある方の中には、脊髄に異常を認めることがあります。脳卒中のように急に症状が出てどんどん進行することは少なく、ゆっくりと少しずつ症状がはっきりしてきます。
脊髄は手足の感覚を脳に伝え、脳からの命令で手足を動かす働きをしています。脊椎という骨(7個の頚椎、12個の胸椎、5個の腰椎、1個の仙骨)と、これらの骨の間に入っている椎間板というクッションから形成される脊柱(背骨)の中にあります。
脊髄の病気にはもちろん腫瘍や血管の異常、奇形などの病気もありますが、これらはむしろ稀であり、次に挙げる変性疾患が多く見られます。

頚椎

病気の原因によって頚部椎間板障害(ヘルニア)、頚部脊椎症(頚椎症)、頚椎後縦靭帯骨化症などと呼ばれます。何らかの原因で椎間板がとび出したり、加齢によって骨が変形してきたり、骨と骨とをつないでいる靭帯が厚く肥厚してきたりすると、脊髄が圧迫をうけていろいろな症状を出します。主に手指や腕のしびれ、肩の痛みの原因となることが多く、手の力が抜けてきたり、症状が強くなると両足がしびれてくることもあります。これらの症状がある場合には、頚椎のレントゲン写真やMRIの検査をすることによって、脊髄の圧迫の程度や頚椎の不安定性が明らかになります。

症状が軽い場合には、薬をのんで頚部を安静にする(頚椎カラー)ことで次第に軽快することもあります。しかしこれらの治療をしても症状が進行したり、痛みやしびれが強くて日常生活や仕事に支障がある場合には、手術治療が必要になります。飛び出した椎間板や骨の変形を削った後に、チタンという金属でできた人工椎間板を入れて固定します。手術の翌日から歩行が可能です。

頚椎椎間板ヘルニアのMRI

腰椎

病気の原因によって腰部椎間板障害(ヘルニア)、腰部脊柱管狭窄症、腰椎変性すべり症などと呼ばれます。

頚椎と同様に椎間板がとび出したり、骨が変形してきたり、靭帯が厚く肥厚してきたりすると、神経が圧迫をうけていろいろな症状を出します。腰痛のほかに足のしびれや痛みを引き起こし、病気によっては座っているときのほうが症状が強かったり、もしくは立っているときのほうが強い場合や、あお向けで寝られないこともあります。歩いているうちに足のしびれが強くなり、腰をおろして休むとしびれが軽快して、また歩けるようになるという特徴的な症状(間歇跛行)を呈することもあります。これらの症状がある場合には、やはり腰椎のレントゲン写真やMRIの検査を行い、神経の圧迫の程度や腰椎の不安定性を調べます。

治療の基本はやはり薬を飲んで安静にすることですが、症状が強かったり進行してくる場合には、手術治療が必要になります。圧迫を受けている神経の周囲を開放することで症状は軽くなり、手術の翌日から歩行が出来ます。
ブロック注射が一時的に効果を示すこともあります。腰椎の牽引は、長期に行うと靱帯などの支持組織をいためるため、特に高齢者には行わないようになってきています。腹筋や背筋を鍛えて腰椎にかかる負担を軽くすることも必要です。

腰椎椎間板ヘルニアのMRI